フィルムメイキング第4回 照明

フォトグラフィーPhotography ギリシャ語で「光」+「描く」
シネマトグラフィーCinematography ギリシャ語で「動き」+「描く」=「記録する」

”光り”を作るとは?

光は影であり、光は色を出すことである
そして
ライティングとは、単に「光をあてること」ではありません。
光を使って”雰囲気”を作ることです。
例えば、同じ場所、登場人物、同じ内容のセリフのシーンでも、
それが青春映画か、ホラー映画か、コメディーかの違いで、ライティングも変わるはずです。
あるいは、登場人物の精神状態や感情、状況などを表現する手法のひとつとしてライティングを使用します。
つまり、ライティングとは演出であるのです。

 

照明基礎・レフとライト位置
照明の重要性

ハリウッドなどの撮影監督制度をとっている現場では、むしろカメラのオペレートと同様に照明が重要視されているし、何よりもライティングを含めて撮影のトーンを決めることが映像を統括するカメラマンの役目になってきていることは疑いの余地はないだろう。ただ、照明というのは非常に難しいものと思われがちで、 既成の入門書を見回してもわかりやすく実用的なものは少ない。

レフのイメージトレーニング

ここでは、最初にキーライトがどうだとか、タッチがどうだとかいきなりいってもわからないという前提のもと、第一ステップとしてレフを取り上げることにした。レフは、基本的に暗い所を明るくするっていうのが原則なのでわかりやすいと考えられる。
ところが困ったことにレフは、太陽の光を反射させるものだから、太陽が動いていくと、微妙に角度を変えていかなければならない。で、当たっているようで当たっていないへんな当たり方で本番にいってしまったりすることがある。これを回避する一番てっとり早い方法は役者に常にまぶしい状態であるかを確認することだ。だが、俳優の集中力をそこで剥いでしまうのももったいない話なので、照明担当としては次のイメージトレーニングをしてみたらいい。実は私もレフの当て方があまりうまくなかったのだが、これによってある程度の線までいけるようになった。ま、本職はディレクターだからそんなにうまくなる必要もないのですが。
そのイメージトレーニングの方法とは、まず太陽と当てる被写体と照明担当の自分との間を想像上の三角形で結ぶ。そして太陽と被写 体を結ぶ線のちょうど真ん中に仮定の物体を想像する(下図の×印)。この仮定の物体が正面になるようにレフを持てば、あら不思議、太陽の光がレフに反射して被写 体にほぼ当たるようになるのだ。これを応用すれば、動いている被写体だって結構追えるようになるはずである。

図の×印にレフの正面がくるようなイメージでレフを持つと、太陽と被写体の角度が揃って、簡単にレフを当てることができる。 よくわからない場合、アマチュア同士なら眩しいかどうかを被写体に聞けばいいんだけど。
太陽が強く差していたり、逆光での撮影では、レフを使わないと被写体の光と影との差が大きくなりすぎ、大変見にくい映像になってしまう。

レフは、さきほどもいったように画面の暗い部分を明るくするというために使われる。これってつまりは、その位置からライトを当てているのと同じことなのである。太陽も光源であり、ライトのひとつだと考えれば、レフを含めて合わせて2つのライトで照明している…というふうにイメージすることができるだろう。

ライト位置~既成の照明技術入門書に書かれているあれって何

 ここで、一回話を変えよう。よく既成の映像技術入門書に、人物をライトが上から当てたり、下から当てたり、正面 、横、斜め前、後ろ、…などなどから当てている写真(下記)が載っているが、あれは一体何なのでしょう。あんなものいきなり見せられたって現実の照明には、あまり役に立たないと思えてしまう。だって、照明する被写体は、人物だけじゃなく、部屋だったり、壁だったり、物だったり、大体はそれが入り乱れているわけだからだ。
さらに現状から言えば、真っ暗な所に照明を一から作ることなんてスタジオ以外はほとんどないといっていいんじゃないんだろうか。特に近年、フィルム感度やビデオの撮影感度が上がっていることを考えれば特にそういえる。例えば、オフィスでロケセット撮影となった場合、上の蛍光灯を全部消して、なんてやってる人は限りなくいないに等しい。それに実際蛍光灯が写り込む可能性もあるのだ。

●[ライト位置からのカテゴリー分け]

フロントライト

プレーンライト

サイドライト

トップライト

フットライト

バックライト

ラインライト

レンブラントライト

 さきほど、オープンのロケでさえ、太陽とレフという2つの照明により、バランスのよい光のコントロールができることをいった。これと同様に室内においても、ある程度の数のライトによって光をコントロールすることにより一歩前進した映像をつくりあげることができるのだ。
上記の写真は「ライトの位置からライトをカテゴリー分け」したものである。だが単純にこう当てればいいといういうものではない。例えばレンブラントなら「暗いイメージ」、フットは「おばけ照明」とか早合点してはいけない。
照明とは基本的にライトを複数台数使って効果的に映像に定着させるもの。だから一見レンブラントだけのような光を構築する場合でも、フットまたはフロントの光をうすく当てて、光と影のコントラストをもう少し弱めておく。
なぜ、そんなことをするかというと、一番シンプルな答えは、その次のショットにつながった時に光のイメージを壊さず見えるようにするためだ。上記のレンブラントのあとに例えば目のアップが突然欲しくなったらどうする? うすいフットがあれば暗くて見えないということは少なくとも回避できる。観客は見えないという状況に苛立ちを覚えがちである。コントラストの強い「ゴットファーザー」のような照明でももちろん複数台のライトが使われていて念密な計算の上に光と影のイメージを作っているのだ。

3点照明

img_05_01

●[ライトの目的からのカテゴリー分け]

 キーライト……主光源、その場面の設定上の光であり、中心となる光である。
昼間の室外のロケでは普通太陽光線がこれになる。

 おさえ(フィルライト)…補助光源、影などを消し、被写体を明るくしたりツヤをつけたりする光。
昼間の室外のロケでレフで太陽光を反射し、暗い所にあてているのはこの光。

 タッチライト…上記のラインライトのような効果を基準。
被写体を背景と分離したり、 立体感を与えたりするための光。

キーライト

おさえ(フィルライト)

キーライトとおさえ

レフの効果をライトに置き換えると照明の効果が見えてくる。キーライトが太陽光線で、おさえがレフの反射である。キーライトだけだと被写体に必ず強い影ができてしまう。おさえを当てることによってその影を弱める。この場合は人物の画面向かって右の頬ですね。キーライトだけよりもツヤのある表現ができているのがわかると思う。
逆光の場合などは被写体の正面に光がまわってこないので被写体をきちんと見せたい時にはおさえは必須となる。

 

 キーライトとおさえについては、レフでやったことをそのままライトに置き換えているだけですから理解できることと思う。では、3つめのタッチライトとは何かを説明していこう。

透明なもの、立体感を出す、暗さを表現するにはタッチライト(斜め後ろからの光)が有効

 通常レフは、カメラから見て、人物などの被写体の正面にフラットに当てるものですが、場合によっては、下から、横から、斜め後ろからなどから当てることがある。特に斜め後ろからは使用頻度が高いといえる。例えば、昼間の雨、煙、グラスなどのガラス関係、背景が暗い所で人物を暗い感じに見せる場合などに使う。 雨や煙、グラスなどは、この逆からの光がないとテカリ感が出ずこもった感じになる。アップでは必ず入れたい所だ。
もちろん、この効果は室内のライトを使った照明でも同様である。通常の室内撮影(スタジオ、ロケセット)などでのライティングでも、この斜め後ろからのライトがタッチライトと呼ばれて、立体感を出す重要な光になっているのだ。
下記の写真で検証してみよう。さきほどのキーライトとおさえの人物写真にタッチライトを加えると、画面向かって右の髪の毛から肩にかけて光のツヤが出て、背景に溶け込んでいた人物がぐっと画面の前面に出てきた感じがしないだろうか?これが立体感の効果なのである。

キーライトとおさえ
タッチライト
3点照明の完成

キーライトとおさえとタッチ

斜め後方からの光(タッチ)は背景と被写体を分離し、画面に立体感を与える効果がある。雨や煙、グラスなどの背景と分離しにくい被写体には必須の光であり、室内の照明においては基本的な光のひとつである。
屋外のロケで人物に対しレフを使ってここまでやる例はわりと少ない。これはそこまで光をコントロールしきれないためだと思われる

 一般的な劇映画やドラマの室内シーンでの人物のアップや長くそこにいて演技する場所にはこの3方向からの光があてられていて、そのショットで誰が演技しているかが照明的に演出されていることがわかる。
特にその他大勢が背後にいる室内シーンなどを見ると、メインとなる人物にはこの3点照明があてられていて、エキストラとか重要でない人物にはキーとおさえだけがあたっているというようなショットを目にすることができるだろう。また屋外のシーンではメインがキーの太陽光とレフのおさえがあり、その他大勢は太陽光のみといった形が多いようだ。

位置と目的

 前回と今回で、光を位置と目的の二つの面から見てきた。 もちろん、写真はひとつの設定上のサンプルでしかない。前回の位置のカテゴリーに入っているすべてのライトはキーライトになる可能性を持っているし、3つの照明それぞれの光の強さはその演出の意図によって調整され、必ずしも写真のようなバランスであるということではない。
そして、キーライトの位置によっておさえの位置も微妙に変わるし、タッチの位置も変わるだろう。極端な話、ラインライトがキーライトになら、タッチライト
が必要ない場合もありうるのである。暗い部屋で懐中電灯を3つ用意して実験するのもいいかも知れない。
さらに、必要に応じて、下から、横からなどその他の角度からの光を使って照明の画面演出にチャレンジしてみてほしい。また、光が強すぎると感じた場合は白紙やカポック(白い発砲スチロールの板)を使って光を反射させて被写体にあててみる(バウンスライトという)とまた微妙な違いが出る。
  余談だが、よくプロの照明の疑問として、「同じものを撮影しているのに、引きからアップになったとき、照明が変わるのはなぜか?」というのがあるが、こういう細かいことが積み重なっているからだと思われる。画面に占める面積によって効果を変えるのは、被写体をより的確に見せるためには当り前なんだという解釈なのだ。

 既成の映像入門書では、[位置][目的]というこの2つのカテゴリー分けを明確に区別せず紹介しているため、照明を難しくしている可能性がある。またカテゴリー分けには[方法]という3つ目の分け方もあり、ダイレクト、ディフューズ、バウンスというのがここに入ってくると考えらる。これについてはまた別の機会に。

キャッチ
これは基本というよりは、方法のひとつです。
キャッチというのは、人物の目の光のことです。
瞳に光が入っていると、ぐっと表情が生きるのです。
キーライトやおさえのライトの角度によって目に光がうつらず、ただの黒目になってしまっているときに、キャッチライトやキャッチレフを使って瞳に光をうつし、生きた表情をつくるライティングですが、人物の心情によっては必要でないこともあります。
目の表情のための光ですので、もちろんクローズアップのとき以外はあまり必要ではありません。

「映像制作裏ワザ入門」
http://www.openeyes.jp/html/ura_photo_light01.html


PDF