フィルムメイキング第7回
 編集

ここでは、ポストプロダクションの作業の中でも最終工程である編集とマスタリングについて学びます。編集とは映像を最終的に完成に近づけるためにおこなう作業です。大きくは映像の編集と音入れ、タイトルワーク、カラー補正などの微調整、そして完パケのフォーマットとマスタリング作業になります。

編集 Editing とは?

編集作業は映像制作の最終工程です。映像作業は、ふたつの作業から構成されます。すなわち映像を切る作業と、つなぐ作業です。

編集は

『切りとる』   と  『つなぐ』

 

です。

『切りとる』    とは   カット(cut)    であり、    トリム(Trim)    です

必要な部分を必要に応じて切り出すことです。
(in point/out point)

『つなぐ』  とはそれぞれの素材(カットと呼びます)を横につないで並べていくことです。並べる順番で次の映像が決まります。

最後に

つないだ  カットとカットのつなぎ目に『効果』を入れることを

『トランジション』(Transition)   = (画面の切り替えエフェクト)

 

と呼びます。

私たちが扱う映像の作業をおこなう時間軸のことを『タイムライン』Timelineと呼びます。
タイムラインは、AfterEffectsやPremiereProなどの合成や編集を行うときに必ず出てきます。確実にその考え方を覚えてください。例えば、
タイムライン上では右方向が時間が進む ➞➞➞➞➞(未来)future
タイムライン上では左方向が時間が戻る (過去)past⬅︎⬅︎⬅︎⬅︎⬅︎
になります。


(過去)past⬅︎⬅︎⬅︎⬅︎⬅︎(現在)present➞➞➞➞➞(未来)future

 

タイムラインでの作業(領域)を
AfterEffectsの場合は


『コンポジション』 Composition  と呼びます。

 

PremiereProの場合は


『シーケンス』 Sequence  と呼びます。

 

今日は編集の流れをひと通り一緒にやってみましょう!

編集とは、”切る作業”と ”つなぐ作業” である

Cuttingカッティング
まずは映像を切ること(Cutting)、切ることによって映像を”ある切り取られた独立した時間”に捉え直すことができます。実際にはその時のさまざまな状況、カチンコや監督の声、スタッフの影、本番前の深呼吸なども記録としての映像には含まれていますが、そこから必要な部分を切り出す必要があります。必要な部分とは何か?その意味もふたつの意味を持っています。ひとつは”不必要な部分”の除去。前述した余計な部分にあたる箇所を捨てる作業、そしてもうひとつは”必要な部分”を抜き出す作業です。このふたつ目の”必要な部分”とは何でしょうか?監督は映像全体を見渡しながら、そこに何の映像が必要かを考えていきます。言わば映像のコンテキスト(文脈)を考えながらそこに最適な映像の”必要な部分”を選んでいくのです。

スイッチング Switching

スイッチングとは、編集における”切る作業” と ”つなぐ作業” を同時にしかもリアルタイムにおこなう方法である

では撮影時に”必要な部分”だけを記録して、”不必要な部分”を記録しない事は出来るのでしょうか?答えはYesであり、Noです。意図的に最小限の不必要な部分を構成し、なるべく無駄を作らない方法もあります。テレビにおけるバラエティ番組やセットを用いたテレビドラマ、ニュース番組などはその方法です。そのために私たちは、編集に当たる部分を別の方法で解決しています。それがスイッチングです。スイッチングによる映像のつなぎはライブ性の高い番組コンテンツや実際のコンサートや舞台演劇などの実際のライブ記録映像などでも用いられます。この場合には編集上で複数のカメラを同時に再生しながらあたかもその場でスイッチングしているように映像を切替えていくことが出来ます。この手法は実際の現場に観客がいるような感覚、いわゆるライブ感を出す場合に適しています。その場合には基本的に時間軸上の省略は存在しません。もし映像の中に時間の省略が行われる場合には、映像と映像の間にはディゾルブなどの効果を入れるのが一般的です。

davinciresolve12multicam(マルチカメラ編集 DaVinci Resolve 12)
映像をつなぐ作業と映像と映像の間のつなぎ方を作成していきます。映像のつなぎ方によって観客は映像の持つ意味の解釈を変えていきます。その意味で編集の果たす役割は大変大きいことになります。そのいくつかの例を示していきましょう。

クレショフ効果

クレショフ効果(英語: Kuleshov Effect, フランス語: Effet Koulechov, ロシア語: Эффект Кулешова)は、ソビエト連邦の映画作家・映画理論家のレフ・クレショフ(1899~1970)が1922年に全ロシア映画大学学内で実験によって示した心理的効果です。

クレショフは次のような実験の中で3通りの編集をした映像を観客に見せ、その反応を調べました。
ひとつは、『スープの入った皿→男の顔』。ふたつ目は、『棺に横たわる少女→男の顔』の順番に編集しました。3つ目は『横になっている女性→男の顔』その結果、それぞれに対して「男が空腹を感じている」、「男の心情が悲しみをもつ」、「男が女性に対して魅力を感じている」と感じました。

このことから、映像のつなぎ方が解釈を生み出し、そのつなぐ順番によってそれぞれ別の意味やムード、雰囲気をもたらすことが出来ることが分かります。これが映像編集のもっとも基礎的な考え方です。この効果は、映像表現以外でも、プレゼンテーションや広告などにも応用されています。

映像編集は、そのつなぎ方によって個別の解釈をもち、感情、心理、ムード、雰囲気をもたらす。

 

モンタージュ(Montage)理論

クレショフの実験のように、本来は不連続なショットとショットをつなぐことによって、映像に新たな特定のムードや意味を生み出すことを、「モンタージュ」と呼んでいます。さらに、映像に音声を組み合わせたものを、「視聴覚モンタージュ」と呼ぶ場合もあります。静止画の写真のみで複数の画像を組合わせたもの、あるいは合成したものを、「フォトモンタージュ」と呼びます。
いずれにせよ、モンタージュ技法とは、「ある意図的な映像(組み合わせ)をを視聴した時に、そこに何らかの意味や感覚を見出そうとする」人間の特性を利用しており、映像編集の基本的な原理になっています。

モンタージュの起源

モンタージュ(Montage)は1920~30年ごろのソビエトで、エイゼンシュタインやプドフキンらによって理論として確立されました。当時の映画は音声がなかったため、映像間のつなぎ方の理論として組み立てられ、トーキー時代になって視聴覚モンタージュとして発展しました。
エイゼンシュタインの代表作「戦艦ポチョムキン(1925)」の中の「オデッサの階段」シーンは、モンタージュの代表例となっています。

エイゼンシュタイン監督作品『戦艦ポチョムキン』のオデッサの階段の場面(ソヴィエト、1925年)

この「オデッサの階段」シーンは、モンタージュ理論の代名詞となっており、民衆と権力、自由と弾圧、恐怖と狂気が極めて図式化した対立の構図となって描かれています。

編集で切り取る時間、つなぐ時間

編集によってもたらされる映像の時間というのは、必ずしも実際の時間の流れとは一致しません。例えば、15分の映像を見た時にその映像が15分間に起きた出来事とは決して限らないのです。ここに映像と実時間の不一致が生じます。

映像と実時間の一致と不一致

編集によってもたらされる映像の時間には時間と空間の一致と不一致、別の言葉を借りれば時間と空間のジャンプがあります。編集の中で時間は一瞬にしてジャンプし翌日になったり、あっという間に10年の歳月が経つことが出来ます。また、主人公が次の瞬間に別の場所に現れることも出来るのです。また時間の経過さえ遡ることや同時に行なわれていることを同時に映し出すことさえ出来るのです。

つまり映像は切り取られた時間であり、再び再構成することの可能な極めて自由度の高い要素だと言えます。

カットの特徴
映像の単位であるカットを考えてきましたが、カットとカットのつながりを考えていきましょう。

映像のコンティニュイティ
映像の連続性(一致)のルールと不連続性(不一致)

映像の連続性のことをContinuity コンティニュイティと呼びます。映像にとってこのコンティニュイティは非常に大事なことです。映像が繋がっているか、繋がっていないかは観客に心地よさをもたらす反面、上手く繋がっていない映像は逆にストレスを与える場合もあります。ここでは具体的に「映像のコンティニュイティ」を見ていくことにしましょう。

時間の連続性
動きの連続性

方向の連続性(一致)
位置(関係)の連続性(一致)
視点の連続性(一致)

時間の連続性
編集では観客を混乱させないために守らなければいけないルールがあります。それは連続性と呼ばれるものです。カットを考える場合にその前後のカットとのつながりとしての連続性を考慮する必要があります。人物が床に倒れ込むカットの次には床に体が着くという動作につながらなくてはなりません。次のカットに床から跳ね上がるカットが来たら、観客は倒れ込まずにすぐに飛び起きたと思ってしまうでしょう。これが時間の連続性です。

つまり、あるカットの中の出来事が次のカットでも継続する場合、言い換えれば一連の動作をカットを切って見せる場合には、その時間的な継続性をきちんと維持する必要があります。そのために時間を正確につなげることや動きをつなげる必要が出てきます。また、画面内の方向や位置関係、視点の変化に伴う連続性も考えていかなければなりません。これは単に時間的な連続性だけではなく、方向、位置関係、視点の整合性の一致ということを含んでるのです。

このことは、前回の実時間の不一致、時間の自由さと一見矛盾することに思うかもしれませんが、観客を混乱させないためのルールとして覚えていて欲しいことです。
逆に連続性のルールを無視する、あるいはわざと不連続なカットのつなぎをする場合もあります。その場合は、その場面に特殊な意図があることを意識させます。カットバック、クロスカッティング、フラッシュバック、インサートカット、ワンアクション、ダブルアクションなどが挙げられます。

Reverse Cut リバースカット
Cut Back カットバック
Cross Cutting クロスカッティング
Flashback フラッシュバック
Insert Cut インサートカット

Reverse Cut リバースカット
一番一般的な切り返しショットです。ふたりで会話している時に一方がしゃべった後にもうひとりの方へカットが移ります。あるいは、
要は時間的な経過の中でカットが繋がっていきます。同時に行われている時間はありません。
One Actionワンアクション、Dubble Actionダブルアクション
ひとつのアクションをワンカットで見せるか、複数のカットで見せるか、ということがあります。ワンカットで見せる場合にはあまり問題になりませんが、複数のカットで見せる場合にはそのつながりに気を配る必要があります。
また、ひとつのアクションを強調するために同じアクションを別アングルから何度も見せる場合があります。これをダブルアクションと言います。仮面ライダーが爆発の火炎から登場する時にカッコいい場面として何度も繰り返されます。

Cut Backカットバック ”切り返し”
2つ以上のショットを交互に切り返す編集技法。場面Aと場面Bを時間の連続性を持って繋ぐ。
2つ以上のシーンを交互に入れ込むこと
それぞれのシーンの対比や対立、重なり、一斉、反復、急転など
逃げるルパンと追いかける銭形警部を交互にカットバックします。しかし、そこには時間の連続性があるとは限りません。2人は時間的に同時に存在し、共存していますが、時間的経過が連続しているわけではなく、同じ時間帯を交互に行ったり来たりするということです。

Cross Cuttingクロスカッティング
異なる場所で同時に起きている2つ以上のシーンを並行に交互に繫ぐことによって、緊張感や臨場感を出すための演出的な技法をいう。

『國民の創生』D・W・グリフィス監督
『ゴッドファーザー』フランシス・フォード・コッポラ監督 洗礼式と暗殺場面の対比などが有名である。

「ゴッドファーザー」”The Godfather”(1972) Baptism Scene

Flashbackフラッシュバック
瞬間的に短いショットをインサートして思い出したり、過去が蘇る。視覚的効果をもたらす演出技法。場面自体にもフラッシュを入れたりして、瞬間的に脳裏に浮かんだ様子を表したりします。

Insert Cutインサートカット

 

イマジナリーラインと180°ルール(180 degree rule)

ふたり以上の登場人物がいる場合にお互いの位置関係、視点を混乱させないためにカメラ位置に関する法則(ルール)が存在します。それは、イマジナリーラインと呼びます。(海外では180°ルールと呼びます)

具体的な例を挙げていきましょう。登場人物としてここに向き合ったふたりがいるとします。そこに撮影のためのカメラを置く場合に、ふたりを結んだラインを”イマジナリーライン”と呼び、カメラは原則としてこのラインを超えて撮影してはいけません。それは、映像として登場人物の向きや視線が画面上で逆向きになるため観客にとって誰が誰に向ってアクションをしているのか混乱を来すからです。つまり一度どちらかの側で撮影を始めたら最後までそのイマジナリーライン(180°ライン)を超えずに撮影するのが原則なのです。これをイマジナリーライン(ルール)、180°ルールと呼びます。

しかし、このルールに例外もあります。それは意図的に観客を混乱させたりする場合です。また、カメラがドリー(ヨコ移動)した場合にこのイマジナリーラインを超えた場合には、次のカットでもラインを超えてしまっても混乱が生じることがないからです。

30°ルール(30 degree rule)
カットの種類

強調
つながり
同ポジ
状況説明(カット)
ジャンプ(カット)
なめ
Cut Awayカット・アウェイ
Re-action Cutリアクション(カット)
Insert Cutインサート(カット)
見た目、主観、POV(Point Of View)
アクション(カット)つなぎ
ダブル・アクション
マッチ・カット(Match Cut)  2001年宇宙の旅、猿人の骨が宇宙船になる
逆目、逆サイド
客観
スプリットカット(Split Cut)画面分割

つなぎの種類

トランジション
ディゾルブ、O.L.
ワイプ
カットイン、カットアウト
フェードイン、フェードアウト
ホワイトアウト、白飛び、白飛ばし
ブラックアウト、暗転
フラッシュバック

編集の実際

編集は古くはフィルムで行なわれていました。ポジフィルムをムビオラと呼ばれるビューワーに掛け、使い所にマーキングをし、フィルムを直接カッティングしていきました。

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現在では、ノンリニアによるDTV(Desktop Video)の時代にはいり、すべての編集作業はPC上で行なわれています。

そもそも、デジタル編集は70年代にジョージ・ルーカスがルーカスフィルムを設立した時から開発がスタートしています。Editdroidと名付けられたそのシステムはのちにAVID社に売却され、AVID Media Composerとなって今日の編集機能の標準規格となっています。

リニア編集とノンリニア編集、オフライン、オンライン編集

フィルム編集の次の段階としてビデオテープによる映像編集の時代がありました。U-Matic(3/4インチ)、Becam、Becam-SP、D1、D2、などのテープが使用されました。オフライン、オンラインと呼ばれる仮編集と本編集の区別もこの頃に生まれました。現在は、オフラインとオンラインでのデータの差はあまりなくなっており、同じデータを使ってコンピュータ上でのプロキシーと呼ばれるクローンデータを用いて作業が行われています。

リニアとノンリニア

  • リニアLinear(直線的編集)とノンリニアNon-Linear(非直線的 編集)
  • 編集におけるリニアとノンリニア
  • テープ編集とDTV(デスクトップビデオ)
  • リニア編集はシーケンシャル(順次再生)
  • ノンリニア編集はランダムアクセス(非連続再生)

 

現在の編集システム

FLAME

AVID DS

AVID MEDIA COMPOSER

FINAL CUT PRO

PREMIERE PRO

 

デジタル編集の特徴

ひと昔前までの素材管理ではなく、ソースと共有しながらアセット管理するスタイルに変わってきました。

 

 


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