先端映像表現技術論第1回 プレビズ

プレ・ビズ Pre-Vis Pre-Viz

ここでは、プレビズの歴史とその目的、意義に関して話をしていきたいと思います。

その前に、ざっと実写映像制作におけるワークフローを示しておきます。

プレビジュアリゼーション Pre-Visualization

撮影前に再現、シミュレーション = ビデオコンテ的

プレビズは、元々はアニマティクスAnimaticsと呼ばれ、1980年代から作られるようになっていきました。その目的は、絵コンテでは理解やイメージを伝えられない『カット割り』、『動き』や『スピード感』を示すための、言わば 動くコンテビデオコンテ としての役割でした。

photomatics 写真、紙を動かす
cinematics photomaticsと同じ?
animatics アニメーション、絵コンテを動かす

そのため、当初は、絵コンテを切り張りした紙や人形であることが多かったようです。

『スター・ウォーズエピソードVI-ジェダイの復讐-』(1983)では、ジョージ・ルーカスが設立したVFX工房ILMの中でXウイングのシーンなどをCGを使うことを実験しながらアニマティクスを検討していきました。有名なのは森林内を疾走するスピーダーバイクのシーンです。

『スター・ウォーズエピソードVI-ジェダイの復讐-』(1983)Speederbike Animatic Comparison

実際の映像

アニマティクスはあくまでも絵コンテの延長上にあり、重要なCGやVFXなどの合成カットのみ作られました。それは目的の多くがポスプロのCGやVFXスタッフの確認のためだったからです。

プレビズはその初期の段階ではフルCGのシーンを簡易な形状モデルで再現して、やはりカメラワーク、カット割りなどの検討に利用していました。その工程をアニマティクスと呼びます。

や簡単なCGモデルやCGセットを作り、ロケーション、セット、撮影、照明などの実写の方法を検討

カット割り、カメラワーク、
グリーンバックの組み方、合成方法、編集などポスプロの技術的手法も検討することによって撮影の効率化やコストパフォーマンスを図る

最近のCGはいわゆる3DCGの枠に留まらず実写との合成や、VFXなどのスペシャルエフェクトとのからみが多くなってきました。そのために、実写の撮影前に撮影をシミュレーションすることや、フルCGのシーンも簡単なオブジェクトモデルでシミュレーションすることが重要になってきました。このことをPre-Visualization プレ・ビジュアリゼーションと呼び、監督、カメラマンはもとより、クライアントに対してもプレゼンテーションしています。

映像の撮影前に、カメラアングル、画角、セットや 照明の状況を把握し、効率良く撮影を進めるためにまた絵コンテから一歩踏み込んでの撮影の手順、合成方法の検討に用いられます。

この手法は、最近のハリウッド映画で積極的に用いられており 、事前に本編のほとんどをプレビズ化しています。

 

『スター・ウォーズエピソード1』(1999)以降、映画の中で、アニマティクスがかなり使われ始めています。CGIやVFXが多く取り入れられている映像では、スタッフの共通のイメージや確認のために必要です。

 

プレビズがプレビズという名前で映画に使われるようになったのは、1990年代にはいってです。

「ジャッジ・ドレッド」(1992)ダニー・キャノン監督

「ジュラシックパーク」(1993)スティーブン・スピルバーグ監督

「ミッションインポッシブル」(1996)ブライアン・デ・パルマ監督

あたりとされていますが、その使われ方も全体の一部分のみだったと思われます。

JAK Filmsの設立

その大きなきっかけになったのが、前述したジョージ・ルーカス率いるVFX工房ILMです。
ジョージ・ルーカスは90年代後半から、新しい「スターウォーズ」シリーズを制作する準備のため、1996年頃ルーカスフィルムの敷地内にあるスカイウォーカー・ランチSkywalker Ranchの中にJAK Filmsという世界で始めてプレビズ専用の子会社を設立しました。そして「Mission Impossible III」(2006)に着手します。それは新しいプリプロダクションでのCGを用いたシミュレーションの模索であり、ワークフローの開発への挑戦でもありました。このJAK Filmsはスカイウォーカー・ランチのちょうど3階に位置していたことから、のちにプレビズ会社として独立した”The Third Floor“はここから名前を取っています。現在でもJAKフィルム出身のプレビズ会社は、TTF以外にもHALON、   などが挙げられます。

『スター・ウォーズエピソード3 シスの復讐』(2005)
JAKフィルムは、ここでいくつかの重要なプレビズを任されます。それは全部で500ショット余りのショットを3週間で仕上げるという荒技をやってのけたそうです。
プレビズのアーチストたちは、それまでCG/VFXのスタジオが分業制で細かく作業が区分けされているのに対して、全体を見渡したり、合成やエフェクトのこと、撮影でのフレーミングやショットのつなぎなども考えるという非常にエキサイティングな体験が出来たことに感激したそうです。その体験は非常に重要でした。

ここで、

いくつかのプレビズの事例を見ていきたいと思います。

「パニックルーム」(2002) デビット・フィンチャー監督

元 ILMのアニメーター 「STAR WARS IV」「インディージョーンズ魔宮の伝説などに関わる
監督作品  「エイリアン3」「セブン」「ゲーム」「ファイトゲーム」「ゾディアック」「ベンジャミンバトンの数奇な人生」
映画「パニックルーム」では、CGをほとんど使用しないにもかかわらず(実写の合成やカメラワーク等に用いられているが)、このプレビズの手法が使われました。全編のほとんどが事前にプレビズが作成され、監督のチェックを受け、撮影前のシミュレーションをおこないました。そのため建物の設計や撮影に使用するクレーンなどの選択、カメラレンズの画角などを事前にシミュレーションし、詳細なプレビズ映像を作り上げています。

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「パニックルーム」予告篇

プレビズを手がけたのは ピクセルリベレーションフロント
IMDbhttp://www.imdb.com/company/co0064820/

Pixel Liberation Front, Iron Man 2, Behind the Scenes.

プレビズ会社 The Third Floor

プレビズ会社HALON
“World War Z – Previs REEL” by Halon Entertainment

ハリウッドでは、プレビズの必要性が認知され、専門のプロダクションが何社も立ち上がりました。特筆すべき点は、どの会社も若い社長だということ。
2010年5月 プレビズソサエティ(任意団体)設立 at L.A.

ハリウッドのプレビズ専門会社約10社以上が集結しました

http://www.previssociety.com/

The Third Floor
POV Previs LLC
Attitude Studio
Halon Ent.
Launch
Nvizage
Pixel Liberation Front
Proof Inc.
persistenceofvision.com
brianpohl.com

プレビジュアリゼーション Pre-Visualization

 

•撮影前に再現、シミュレーション = ビデオコンテ的
•かつてはアニマティクスAnimaticsと呼ばれ、1980年代から    作られた
•簡単なCGモデルやCGセットを作り、
•ロケーション、セット、撮影、照明などの実写の方法を検討
•カット割り、カメラワーク、
•グリーンバックの組み方、合成方法、編集などポスプロの技術的手法も検討することによって

撮影の効率化やコストパフォーマンスを図る

 

プレビズのシステム
プレビズのワークフロー

VCAM ヴァーチャルカメラ
プレビズを行なう時に特に重要になってくるのが、ヴァーチャルカメラと言われるカメラの考え方です。実際の撮影の時には映画用あるいはビデオカメラを使う訳ですが、プレビズではその使用するカメラの画角やアパーチャーサイズなどが重要になってきます。つまり本番の撮影をプレビズで正確に再現出来なければ意味がない訳です。

プレビズ以外にも

•ピッチビズPitch-Vis

ピッチというのは、資金調達のためのプレゼンテーションのことです。そのプレゼン時に実際の映像内容が分かるようなパイロット版的を制作することをピッチビズと言います。ハリウッドでは、ピッチプレゼンのために短いパイロット版やデザインやキャラクター設定が分かるようなCGを作ることを始めています。

•ポストビズPost-Vis

プレビズの後、実際の撮影後にポストプロダクション作業が始まる前に実際に撮影した素材を使ってCG,VFX合成のシミュレーションをする。

•オンセットプレビズOn Set-Vis

撮影時に同時に合成をしながらシミュレーションをする手法。
米国では、Lightcraft社が有名である。
http://www.lightcrafttech.com/
東映ツークン研究所が日本で初めて導入している。

「パンナム」TVシリーズ(2011)

オンセットビズの項を参照のこと

まとめ

•非常に有効な作業工程のひとつになりつつある
•ただし日本とハリウッドの現状の違い

ハリウッドでは、当たり前のように行われるようになったが、日本ではスケジュール、コストの問題でなかなか行なわれていないのが実情である

参考サイト
http://www.fxguide.com/featured/Masters_of_Previs_The_very_best_at_bad_3D/

https://www.theasc.com/magazine/june05/sith/page1.html


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